マスカット種は多くの種類をもつブドウですが、品質が最も高いものはマスカットブラン・ア・プティ・グランといえます。この優れた小粒のマスカットは、アハイア地域ではロディティスに次いで二番目に多く栽培され、総栽培量の11.5%を占めています。鮮やかな酸味と素晴らしく洗練された辛口ワインが生まれる高地の畑から、甘口のデザートワインに使われる優れたブドウが採れる低地の畑まで、さまざまな場所で栽培されています。ホワイトマスカットは、ギリシャで最高の甘口ワインを生み出す、まさに「宝石」のような存在。ブドウそのもの、桃やアプリコットなどの核果、バラやオレンジの花、ターキッシュデライト(トルコのお菓子)、ムスクやフルーツの砂糖漬けなどの香りが豊かに広がります。
一方でホワイトマスカットは繊細なブドウであるため、病気になりやすく、生育活力や干ばつの耐性は中程度。畑の位置や標高によっても異なりますが、9月の初め頃に実が熟します。生産のほとんどは甘口のPDOマスカット・オブ・パトラと、PDOマスカット・オブ・リオ・パトラに使用されます。非常に上品な甘口で品種の特性が強く見られるワインとなります。その他、樽で酸化熟成させた複雑味のあるワインや、ブドウを天日干し、または酒精強化させて造る甘口のワインもあります。酒精強化のワインは酵母の働きを止めるためにグレープスピリッツの添加をアルコール発酵前もしくはその初期段階で行います。なお、ホワイトマスカットの辛口タイプはPGIアハイアの認証となります。
豊潤でアロマティック。冷涼気候のあまり熟度が高くないブドウから造られたワインは、フローラルで繊細な白いバラの香りがみられる。暖かい低地の畑の完熟したブドウのワインは、香り高いバラやターキッシュデライト、スパイスのニュアンスが感じられる。甘口ワインはハチミツ、レーズン、ムスク、オレンジマーマレードなどの香り。酸化熟成したものにはランシオの風味がみられる。
辛口ワインの多くは比較的早飲みタイプ。甘口ワインは非常に長い瓶内熟成が可能。
- 辛口ワイン:凝縮感があり香り高い。フレッシュでフローラル、オレンジの花、ブドウの果実そのものの風味、ミネラル感がある。
- オレンジワイン:非常にアロマティックな特徴がある。長いスキンコンタクトによるパンチの効いた味わい、バラやライチの香りをもつ。
- 熟成していない若い甘口ワイン:フルボディでリッチな味わい、品種の特徴を力強く表す。主に酒精強化したワインに多い。
- 熟成した極甘口ワイン:品種独特の素晴らしいバランス感があり、ハチミツやレーズンなどの複雑味のある風味をもつ。通常、天日干ししたブドウから造られる。
魚のフライ、野菜料理やサラダ(辛口)、スパイシーな料理(果皮浸漬で造るオレンジワイン)、クリーミーなデザート、フルーツタルト、マイルドな風味のチーズ (甘口)